森岡賢さん
6月3日。森岡賢さんを想う日です。
もう20年近く前、サーカスのピエロ体験取材へ行ったこと、公園ロケで大変な騒動になってしまったこと…
といった特筆事項だけでなく、ほんの小さな瞬間をふと思い出すことが増えました。
SOFT BALLET、ご自身のソロ、土屋昌巳さんらとのKA.F.KA、minus(⁻)と、様々な形での森岡さんのライヴに足を運びました。
私は一人で行動することが多いので、
終演後のご挨拶となると、ポツンと心細く待つことになりがちなのですが(『邪魔かな?』などと不安を抱きながら)、
森岡さんの花のような笑顔を見ると、
いつもホッとしました。
また、「この間書いてくださった文章、ありがとうございました」などと、取材記事への温かい言葉を必ず掛けてくださる稀有な方でもありました。
それにどれほど力付けられたか知れません。
森岡さんのお姿を偶然他の人のライヴ会場で目撃することも多かったのですが、
背筋を伸ばし、しなやかな指を添えてステージをご覧になっている凛とした横顔は、
暗闇にあっても眩い光を放っていて、どんな遠くからでもすぐに見つけることができました。
群れなくても、多数派に迎合しなくても、
個は個のままで、
自分にとって心地よい居場所を見つけることができる。
森岡さんの在り方や振る舞いから、
そんな大切なことを学んだ気がします。
直接的にも間接的にも、いろんな人と出逢わせてくださった方でもあります。
感謝の気持ちは、時が経つほどにむしろ強まるばかりです。
天にも昇る喜びや恍惚と、その直後に容赦なく訪れる悲しみや絶望。
そういった激しいアップダウンを鋭敏に感受し続けた心の機微が、
森岡さんの生み出して来られた、華やかさと翳りの共存する美しい音楽の数々には映し出されている、と感じます。
2016年8月13日、赤坂BLITZのステージには、
藤井麻輝さん、新録のヴォーカルトラックでリモート参加した遠藤遼一さん(お元気ですか……)、
そして肉体は失われてもたしかに存在していた森岡さんが〝揃い”ました。
3人による「AFTER IMAGES」を
体感できたことを、一生忘れません。
視えなくても居る、触れることはできなくても気配を感じる、命を宿した幻でした。
人間の本質とは一体何なのか?
魂というものは何処に、どんな形で存在するのか?
以前にもましてそんなことを深く考えるようになった、2020年という今です。